定年退職後に東京移住をしてから、3か月目に入った。住むところを整えたり、仕事探しをしたり、日常生活のルーティーンづくりをしたりで、あっという間に時間が過ぎた。それでも気持ちにゆとりができて、額のタテジワが少し薄くなった気がする。
春の花々が終わり、薔薇のシーズンも過ぎて、紫陽花が咲き始めた。そろそろ衣替えの季節だ。梅雨に入る前に、夏物を取りに帰省することにした。緑の多い地元に戻り、新鮮な空気を吸い込む。車の少ない道を走って家に戻る途中、人はほとんど見かけない。周りの家々も、ものすごく静かだ。
表の庭も、裏の畑も、草だらけになっていた。熱中症に気をつけながら、草引きを開始。玄関に出てみると、お隣さんが車(レンターカー)を見に来ていた。挨拶をすると、「違う車が入っていったから心配になって」と言われる。どこかから、見られている。食事に出たら「〇〇にいたね」。セールをのぞいていたら「〇〇買った?」。自動車道を走っていたら「〇時ごろすれ違いましたね」。自治会の掃除当番メモは、手書きの指示書。きっと、どこからか誰かが見ているんだろうな―と思いながら、ゆっくり丁寧に掃除して、バケツを次に回しておいた。どこに行っても、いろんな人の「目」が光っている。面倒だけれど、防犯にはなる。
せっかく買ったけど、地元では人目を気にして着れなかった服をスーツケースに入れて、東京に戻ってきた。みんな自分のことで精いっぱい。自分のことに夢中。人、人、人だらけだけど、他者の目は気にならない。ここで、好きなことを、自分のペースで、好きなようにやる自由を楽しみたい。


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