お薦めの本(6)『歩きたい人のための東京散歩地図』

『歩きたい人のための東京散歩地図』 散歩の達人MOOK 交通新聞社 2025年

 猛暑である。秋風が吹き始めたら歩きたいと思いながら、クーラーのきいた室内でページをめくっている。街歩きの本はいろいろあるが、手に取った本の中で一番惹かれた。どこに惹かれたかというと、駅を起点にぐるりと大きく歩くという点である。スタートの駅名と、ゴールの駅名は良く知られているところだが、ぐるりと線が引かれたルート上には知らない場所が多い。一つの駅から出発し、いろいろ巡って隣駅にたどり着くルートがある一方で、同じ駅に戻るルートもある。2つの駅の間に、あるいは、一つの駅から円を描いた範囲の中で、効率的に歩きながら、ちょっと覗いてみたくなるところが示されている。歩いていて、驚きがありそうと興味がわく。

 見開き2頁でわかりやすいイラスト地図が描かれ、次の2頁に神社や寺、美術館や博物館、レストランやカフェ、公園や庭園などの解説が掲載されている。一つのルートは、それぞれ4頁で完結する。全部で36ルートが紹介されている。おおよその時間が書かれているので、あとは、それぞれの場所でどのくらいの時間を使うか、あるいは、使わずスキップするかで、自由にプランが立てられるし、その場で臨機応変に変えることもできそうだ。

 都心、東京の東部、南部、西部からなる。よく知っているエリアの中にも、今まで知らなかったエリアにも、行きたくなるところが満載となっている。例えば、九段下駅から東京駅に行くコースでは、皇居や丸の内をゆっくり散策して、一つ一つの場所をじっくり味わいたい。桜田門駅を出て京橋駅に至るルートでは、日比谷公園を歩いて帝国ホテル横を通り、銀座を通ってセイコーミュニジアムやポリスミュージエム、映画アーカイブなどを見る。原宿駅を出て信濃町駅に至るルートでは、ワタリウム美術館や岡本太郎記念館を経て、青山霊園を通り、明治神宮外苑銀杏並木を過ぎて聖徳記念絵画館などを見る。渋谷駅を出て渋谷駅に戻るルートでは、いつも行く駅周辺からもう少し足を伸ばし、宇田川遊歩道あたりまで行って戻り、戸栗美術館や松濤美術館あたりをまわって、渋谷百軒店商店街を通る、とされている。

 東京移住をした者が、東京通になるための一つのステップだ。この本を片手に街を歩いてみようと思う。が、それには、街歩きのできる季節までもう少し待つ必要がありそうだ。

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